「一生懸命、がむしゃらに頑張ります」というマインドを皮肉って「頑張ります信仰」という言葉があります。
その前向きな行動を会社はどう見ているのでしょう。わたしの会社に実際にあった話を踏まえて考えてみましょう。
なぜあの人が会社を去って行、なぜあの人は残れたのだろう
かつてわたしの会社には相反する2人が働いてました。
- 一生懸命な人=入社後に直ぐ止めた(A君)
- マイペースな人=70まで働けた(Bさん)
この全く違う思考の持ち主。どんなことが見てとれるのでしょう。
一生懸命なA君について
A君は一言でいうと悪い人ではありません。癖も無く素直で真面目な好青年でした。それは顔を見れば分かること。
ただ少し問題がありまして、いわゆる仕事が出来ない人。物覚えも良くなく、空回りタイプの天然キャラ。旗から見てもそんな感じです。
ある日、ちょっとした不注意で怪我をしてしまい、その辺りからA君の姿を見ることはありませんでした。A君の事情通によると、一箇所に長く勤まらないとのこと。
辞めた後、A君の上司が「一生懸命なのはイイんだけど・・」と胸の内を語っていたと聞きました。
けど現場サイドとしては、そんなA君に将来を期待していまいます。なぜならA君は良いモノを持っているヤツだから。
マイペースなBさんについて
一方、A君とは真逆にBさんはマイペースです。マイペースと書きましたが、いわゆるサボり魔。Bさんに関わりある社員のほとんどがディスります。
たとえば、普通にこなしたら1日に5個、焼き物の壺を作れるとすると、Bさんは3個しか作らない。それでいて給料は同じ。しかも4個作ろうものなら時間外労働で荒稼ぎ。
入社当時の真夏わたしもBさんと一度仕事をしたことがありました。その一番最初に言われた言葉とは以下の通り、
「君、暑くないか?少しで調子が悪くなる様だったら帰ってもイイんだぞ?無理するなよ!健康が一番大事だからなぁ!」
当時わたしの部署にいたトップの上司はいわゆる変人。どの会社にも一人はいる「仕事に命かけてます」なタイプです。
Bさんはこの人が大嫌い。とにかく仕事は二の次三。「まずは疲れないで、いかに安全に業務をするか」を自身のポリシーにしています。
普通、仕事が忙しい時期や、突然入った仕事とか断れず、ボヤキながらも仕方無くするのが昭和マインドだと思います。けどそんなのクソくらえ。゚(-。-)y-゜゜゜
わたしも歳を重ね、この人が言わんとすることが分かる様にはなりましたが、若かった当時のわたしには1ミリも理解不能な思考の持ち主でした。
会社が求める人材とは、高得点を上げる人?確実な1点を出せる人?
わたしは平なので社員を管理したり、会社全体を運営する側ではないので、その考えは分かりませんが、長らく見ていて感じたことがあります。
- 使う側=ゲームのプレイヤー(作りて)
- 使われる側=登場人物(能力者)
部下が将棋の駒だとするならば、たとえ「角」のセンスを秘めた人材であっても、上司としては、確実な「角」でなければ危なくて使えない。それなら確実に一歩前に進める「歩」が欲しいと考えていることが分かりました。
プレイヤー(運営側・上司)が思い描いたストーリー通りに、部下と言う道具が動けず暴走しては、かなり問題なのでしょう。
そして会社としては利益よりも、まずは損失を恐れるってことが見て取れます。つまりリスクを犯すよりも安定を望んでいる。
これを踏まえてA君とBさんに当てはめると、
一個でも多く壺を作ろうと、走り回り、棚にぶつかってしまい、せっかくの商品を壊してしまい、本人も転んでケガをしたA君。
壺が割れただけならまだしもケガはいけません。なぜなら法律によって会社に業務停止命令が出るかも知れないから。
たとえ個人のスキルが高く、人より多く壺が作れたとしても、大きな失敗を犯す可能性がある行為だとしたら本末転倒です。
そもそも、会社が生き残っていることが大前提。それを一番大事な基準として社員を見ているのではないでしょうか。
会社は自社だけではなく多くの社員やその家族、お得意さんのことも考えなくてはいけない立場。そう考えると、Bさんは仕事は遅いし売上も低いです。他の社員に悪い影響を与えています。
けど確実な3個を作り、何十年も勤めて来た。また明日も同じ結果が出せる様なペース配分をしていたのかも知れません。
そうなると、仕事をやらない人が仕事ができる人。会社が求める人材。
なんとも夢のない話ではあります。けどそんな一生懸命な頑張り屋な猪突猛進タイプとは使う側にとって、本当に害でしかないのでしょうか。
成長の差を利用した庭造りにヒントあり?
突然ですが、我が家には『ネグンドカエデ・フラミンゴ』という成長の早い木と、『アオハダ』という成長の遅い、異なるタイプの樹を並べて植えています。
理由は、庭に早いところ、お金をかけずに日陰が欲しかったから。
結論から言いますと、何十年もかけて大きくなるタイプの樹を、将来日陰が欲しい、シンボルツリーにしたい場所にアオハダを植えて、
大きく育つのを待っている間、成長の早い木「フラミンゴ」をアオハダの隣に植えておく。時間差をつかって理想的な庭を実現できる作戦です。
ちょっと趣旨が違いますが、この栽培法は『明治神宮の森』を参考にヒントを得ました。
100年計画で作られた人工の森
明治神宮の森は自然の産物ではなく、何もない原野から100年かけて作られた人工の森だったのです。ヮ(゚д゚)ォ!
1ステップ=松の木が優勢の時代
- まずは神社にふさわし赤や黒の松の木や、全国から送られた大きな木を選んで植える
- 松の間に成長の早いヒノキ・杉などの針葉樹を植える
- さらにその下に将来森を支配する樫の木・楠木・椎木などの常用広葉樹を植える
2ステップ=杉の木が優勢な時代
- 一番背の高かった松の木が成長の早い杉の木に追い越され、枯れて行、杉や楠木の肥やしになる
3ステップ=杉と樫が混在する時代
- いままで森の底辺でくすぶっていた樫の木がとうとう杉の木と肩を並べる様になる。松の木は点々とあるだけになる。
4ステップ(最終型)=主木の時代
- ようやく森の主な樹として植えた成長の遅い常用広葉樹の時代となると同時に、杉の樹や松が控えめな木も混在する。自分たちで勝手に森になってくれる仕組みが出来上がる。
つまり、その樹の性能を利用して自然なサイクルを見出した的な話。
神宮の体裁のために植えた松林に、森の未来はあるのか?
でも別にわざわざ成長の遅い木を植えずに、松林か杉林にすればいいんじゃない?って考え方もありではあります。が、長い目でみるとダメだからそうしたのです。
これは実際にわたしの会社ににおきていることなのですが、松や杉系の人材に当たる社員が優秀となってしまうと、会社は良くはならないのです。
立派でプライドが高く頭の切れる松の木を優遇するために、中堅の杉の木の頭というやる気を切ってしまっては森の成長を促進できません。
そして自分たちの足をすくう(栄養を取られる・将来邪魔になる)まだ足元で小さい成長の遅い木は使えない邪魔者でしかない。
これで安定した会社にはなりません。なぜなら、せっかく将来良いサイクルを生み出す成長の遅い木の芽をつんでいるからです。
ながらく見てきましたが、上層部とつながって、自分たちのメリットのためにしか動かない松の木(上司達)が森の最上部で日光を独占している状況に、中堅社員(杉の木)は仕事をサボる、必要以上やらない社員に育ててしまったのです。
機動力があるスキルの高いものほど、かえって管理が大変
わたしの庭木を管理して気づいたことがあります。短期的に直ぐ大きくなる樹は、折れやすく、すぐに葉がボサボサになり、豆に刈り取る手間がかかってしまう。
なんだか、仕事を卒なくこなせる出来る人に限って、ちゃんとした対応をしないと、手を抜いたり、反撃してきたりまする。面倒な敵ともなりえます。
一方、成長は遅い樹は、大きくなれば丈夫です。毎年何度も枝葉を刈り取る手間はありません。じっと待つことで、真の役目を果たす日陰が出来上がるのです。
最初こそ、スタートダッシュが遅く仕事が出来ない失敗ばかりな頑張り屋でも、同じことを続ければ、それなりに出来る様になるものです。
一番大事なものを純正で身につけている人は貴重
職業訓練は反復練習でそれなりに出来る様になるでしょう。そして人が、その所属する共同体に貢献するマインドを育てる方が難しい・・てか無理です。
でも、「頑張り屋・誰かの役に立ちたかった・やる気を持った成長の遅い樹だ」と考えれば、それは会社にとって宝ではないでしょうか。なぜなら人の思考を変える方が難しいからです。
人を育てることは、ロケットの構造に似ています。
人工衛星を宇宙空間でその役目をするためには、ロケットにくっつけて一緒に飛ばす必要があります。その際、何段階かに分けて、ロケットを切り離して行くのは見て事がありますよね?
明治神宮の森は正にロケット式栽培法。将来、森のメインツリーになる常用広葉樹のために、松や杉の木を使ったのです。言い換えれば、松や杉はメインツリーのアシスト役。
成長の遅い樹だと長い目で見て育てていく。足りない部分は、元々出来る松の木や、中堅の杉の木に委ね、成長の遅い木をカバーしていけばいいと思いましたよ。(¯―¯٥)
おわりに
それぞれの立場によって考え方は異なることでしょう。育てた結果、実がつかないかも知れません。
でも人は機械ではなく感情の動物です。因果応報といいますし、会社の対応に応じて、社員の行動に反映されてしまうもの。
長い目で見てあげる気持ちに頼ってしまうのは、甘ちゃんなのでしょうか?
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